二重星アルビレオ
ちょうど8月下旬の9時頃、天の川が天頂付近を通って、南西側のさそり座方向に延びています。天頂付近には、優雅な姿のはくちょう座が見えます。その白鳥の頭の先、くちばしを示す星が、二重星アルビレオです。織姫のベガと彦星のアルタイルを結んだ線の真ん中あたりに、はくちょう座のβ星アルビレオがあります。この二重星を初めて望遠鏡で眺めました。双眼鏡では二重星に見えなくて、望遠鏡で少し倍率を上げると見えてきます。このアルビレオはありふれた普通の3等星ですが、注目されるようになったのは、オレンジっぽい3等星のすぐそばに青白い5等星がくっついている二重星だと分かってからです。夜空に輝く宝石のように見えるところから、一躍有名になりました。確かに肉眼で見ると、オレンジらしく、青じろっぽく見えます。とても見ごたえがあります。
その画像が、左の写真です。写真にすると、色の感じはイマイチでした。青白さがほとんど出ていません。短めの望遠鏡の方が色が出やすいのかも知れませんが、星の分離がうまくいきませんでした。写真は、左方向が天の北方向です。明るい星が3等星アルビレオで、隣にくっついている星が5等星です。二重星といっても、互いに重力で結びついている場合を連星といい、偶然同じ方向に見えている場合を見かけの二重星と言います。アルビレオの場合は、見かけの二重星だろう、という観測結果が最近発表されているそうですが……。
このアルビレオをさらに有名にしたのが、宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」でしょうか。その中で、この二重星をサファイアとトパーズに例えて<……眼もさめるような青宝玉(サファイア)と黄玉(トパーズ)の大きなすきとおった球が、輪になってしずかにくるくるとまわっていました……>と描写しています。北天の宝石とまで言われる理由がわかる気もします。この「銀河鉄道の夜」はとても悲しい物語なのですが、逆に生きる希望や勇気も与えているのかも知れません。天国に向かう天の川銀河鉄道なのですが、そこには……地球も人間も星からの贈り物、人間の故郷は星々の海だ……という科学的なメッセージも隠されているような気がします。「銀河鉄道の夜」をまた読んでみます。
ということで、インスタントコーヒーを飲みながら小休止です。
データ/ビクセンGP2・8インチシュミカセ・専用レデューサー・EOSM3・ISO1600・25秒・2020年8月12日20時41分
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